ヤベー奴来ちゃったよ編 37

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「いませぇーん」

躊躇なく先生にボケをかましたのは登校したて、初めて来たてのテンコーセイだった。所々空いている席には気付いてないヨ! みたいな顔をして、ずいずいと教卓の方へ進んでいく。

「ホラ、皆いるじゃないですかァ」

「さっき真逆のこと言ってたぞお前」

何が楽しくて担任と今来たばかりの得体のしれない同級生らしき女子がコントやってるのを見せられてるんだ…この教室にいる7割はそう思っているだろう。そして残りの2割は机に突っ伏して朝から寝ていて、最後の1割は屍のように頬杖ついて揃って窓の方へ視線をやっている。UFOでも見えるんだろうか、若干気になるかも、と少し横へ身を乗り出そうと体重移動を始めた時、担任の古典教師が授業中よく使うでかい声で話し始めた。

「朝の会の間に終わらなかったからな、続きやるぞ」

…クラスは黙り込んだ。っていうか元々誰も喋ってなかったかんな。すげぇよな、どんだけ真面目チャンの集まりなんだよ。この間抜けっぽいセンセーが担任のくせしていい子ダナこいつら! ……ところで、

「その言い方えろいネ」

にへら、と笑って見せたんだけどなんか睨まれた。担任っぽい人からはジト目で睨まれクラスの人々からは言葉に表せられない感想を頂いた。ざわざわと空気が鳴った。ひそひそではなくざわざわと。私がなんかマズいコト言った、そういう理由でこの状態になってるんだろうけど、私はまぁ悪くないわな。覚えてないし。今何言ったかいちいち記憶するほど暇じゃねぇんだよ、ってガチキメしたらすごい盛大なため息吐かれたのを突然思い出した。あのため息の犯人…誰だっけ…。

「おーい、左賀ァ? とっとと自己紹介のリベンジやれヨー」

「あ? なんすか、もう購買行ってパン買っていい時間すか?」

ふざけて言ってみたら”購買は無い”とかいうとんでもねぇ冗談飛ばしてきやがった。韻ふんでラップしてるみたいになってるのもそれなりにイラっときたので、そういえばずっと乗せっぱなしになってたスリッパからホコリを寄せ集めて吹いた。吹き飛ばした。ふぅ、と空中に投げ出されたホコリの塊はあっけなく教卓の天板のど真ん中で墜落した。

「……」

しばし役に立たなかったホコリを見下ろしていたが、ニヤっと口角を上げたかと思うと目にも止まらない速さでスリッパを投げた。それは左賀の込めた力をそのまま受けて風や空気抵抗などものともしていないような勢いで衝突した。ぶつかった先の黒い布にははっきりと白い跡が付いた。棒読みでいえーいと言って喜ぶ左賀と、無言で跡を消そうと手でパンパンとホコリを払う古典教師。クラスメイトは思った、寝よう___と。

「寝たら全員に日直の日誌書かせるぞ」

心を読んだようなタイミングでかのようなことを言い出す先生にはクラスメイトたちも思わず顔をしかめて反抗した。口々にブーイングしている彼らを見て、左賀は取り残された気分になり、むしゃくしゃして叩いた。教卓を。バン!とひときわ大きな衝撃音がするので多少驚いて声数が減るも、完全には静まらない教室に、左賀はキレた。

どうして堪忍袋の緒が切れるのか、コイツがブチギレるワケが知りたいワッ!…それは私もなんだよ。自分でもなんで怒ってるのかはわかってないけど、感情に正直に、それって大事らしーじゃん?忠実に守ってる私はホント今年はイイコトありそうだわ。